漫画『悪役令嬢の中の人』の作品紹介
愛を知った悪役令嬢による、痛快な復讐劇
- 悪役令嬢のひたむきで一途な愛
- 因果応報による断罪返し
- 次にくるマンガ大賞2023 Webマンガ部門 9位
原作:まきぶろ
漫画:白梅ナズナ
キャラクターデザイン:紫 真依
出版社:一迅社
2024年10月現在、コミックス4巻まで発売中
2024年11月、コミックス5巻発売予定
漫画『悪役令嬢の中の人』のあらすじ
悪役令嬢は、なぜ「悪役」になるのか?
もともと高慢な性格で、わがままだから?
好きな人を取らせそうになって嫉妬したから?
冤罪で陥れられたから?
本作の悪役令嬢は、誰からも愛されずに育ったのがきっかけとなる。
愛を知らない公爵令嬢「レミリア・ローゼ・グラウプナー」。
孤独な少女は、婚約者への依存と執着をこじらせた末に、世界を破滅に導く敵役となるも、報われないまま命を終える――というのが、「乙女ゲームのレミリア」が本来たどるはずだった物語。
作中のレミリアは、まったく異なる人生を歩む。
子どもの頃のある日、レミリアの身体に転生者「エミ」の魂が入りこんでしまい、エミがレミリアとして生きていくことになる。
レミリアたちが生きる世界は、エミが前世でハマっていた乙女ゲームの物語の中であり、エミの最推しキャラは「悪役令嬢レミリア」だった。
エミは「悪役令嬢レミリア」の幸せを願い、いずれ起こる問題から世界を救うために奔走し始める。
「絶対に 私が レミリアたんのことを幸せな女の子にしてあげる!」
(引用:『悪役令嬢の中の人』コミックス1巻)
周囲の人間を惹きつけながら強く美しく成長していくエミを、レミリアは意識の奥底から見守り続ける。
だが、ヒロインである星の乙女「ピナ」の登場で、状況は一変。
偽証と捏造によって断罪に追いこまれたエミは、信頼していた人々に裏切られた絶望から心の奥深くに意識を閉ざしてしまう。
その瞬間、レミリアの意識が浮上し、身体の主導権を得る。
エミが願った「レミリアの幸せ」を取り戻し、ヒロインと裏切り者たちに制裁を与えることを誓うレミリア。
愛を知った悪役令嬢による復讐譚が、ここから始まる。
漫画『悪役令嬢の中の人』の感想
ストレスのない勝ち確エピソード
悪役令嬢ものといえば、「断罪」と「ざまぁ」。
本作で描かれるのは完全勝利による「断罪返し」だ。
1話と2話で、エミの人のよさ、エミに心を救われるレミリア、ピナの醜悪さとエミの断罪までがテンポよく描かれる。
2話でエミが断罪され、レミリアが復讐のための地盤固めに動き出したあとは、ピナたちへの断罪返しに向かって一直線。
人たらし・戦闘チート・内政チートのフルコンボを駆使して、レミリアが反撃の準備を整えるエピソードの積み重ねは、読んでいて気持ちがいい。
一方のピナは、身勝手で、今度どんな目に遭っても自業自得としか思えない人間性が描かれ、レミリアによる「ざまぁ」への期待がどんどん高まるストーリー構成となっている。
喜怒哀楽の描き分けの上手さ
本作の魅力の一つが、キャラクターの二面性。
レミリアが見せる、優しく清らかな表の顔と、ほの暗い裏の顔。
ピナの天使のような笑顔と、憎々しげなおぞましい表情。
2人とも外面がよく、本心は腹黒いという点では同じだが、レミリアの可憐な美しさと恐ろしさ、ピナの親しみやすい可愛さとおぞましさといった、それぞれの雰囲気と性格に合った表情の描き分けが上手い。
特に初登場時のピナ。
「同情の余地のない性格の悪さ」が一目で理解できる表情の描き方が、秀逸。
レミリアも、他人の目がなくなった途端に、表情が一変するのが面白い。
清らかな笑顔から一転、『DEATH NOTE』の「計画通り」ばりの極悪人顔になるシーンでは、表情のあまりの落差に思わず笑ってしまう。
悪役令嬢による愛の物語
善と偽善の境目は、どこにあるのか。
打算で他者を救済することは、真の優しさではないと言いきれるのか。
本作を読んでいると、ふとそんなことを考える。
多くの人々に見返りなく助けの手を差し伸べるレミリアは、決して善良な人間ではない。
レミリアの行動原理はすべて「エミ」にある。
エミならこう考える。
エミはそんなことはしない。
それがエミの願いだから。
言ってみれば、レミリアの善性は偽りであり、レミリアの行動は欺瞞と偽善でしかないが、「レミリアのエミへの愛が世界を救った」のは間違いない。
この作品はありふれた復讐譚などではなく、純粋でひたむきな深い愛の物語である。
関連URL
【コミカライズ:pixivコミック】
『悪役令嬢の中の人~断罪された転生者のため嘘つきヒロインに復讐いたします~』
【原作小説:小説家になろう】
『悪役令嬢の中の人』
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